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イースト・サセックス(East Sussex)はブライトンのような都市部でさえ、
のどかな海岸に沿っているせいか都会の喧噪を感じさせない。
ブライトンの東にカックミア・ヘヴン(Cuckmere Haven)、ビーチー・ヘッド(Beachy Head)がある。
その間(Cuckmere Haven&Beachy Head)7`の切り立つ白亜層の絶壁がセブン・シスターズだ。
上の画像はカックミア・ヘヴンから見たセブン・シスターズ。
※白亜層は白亜紀の地層で、諸説あるが、約1億4千万年〜6千四百万年前、中生代最後の時代※
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↑ バーリング・ギャップから見たセブン・シスターズ。
ローマ帝国がブリテン島に上陸しようと初めてドーバー海峡を渡ったとき、白亜のドーバー断崖を見て
アルビオン=Albion とよんだという。アルビオンの語源Albusはラテン語で白の意、ブリテン島の
古名アルビオンはすなわち「白亜の国」ということだ。ドーバーからセブンシスターズまでかなりの距離だが、
行ってみればだれにもわかることで、イングランド南東部には白亜の断崖が多い。
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サウスダウンズよりビーチィヘッドをのぞむ。
一番高いのがサウス・ダウンズ(South Downs)の南端ビーチィ岬(Beachy Head)、
海面から162bの高さにある。海の色に見とれて時が過ぎた。
South DownsのDownsはケルト語dunに由来し、丘の意。ドーヴァーからコーンウォールにかけて
石灰岩層や白亜層の丘陵地が続き、Downの付く地名がみられる。いずれも語源はケルト語dun。
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石狩川や釧路川(釧路湿原)の蛇行さながらのCuckmere River。なだらかな丘の向こうがカックミア・ヘヴン。
サウス・ダウンズの景観だけ見ていると、セブンシスターズの断崖は別の場所にあるように思えてくる。
川は人生に似ている。まっすぐ流れる川。蛇行する川。迷走する川。清流。濁流。奔流。
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ウィルミントンはビーチィ岬(Beachy Head)からA27に向かう細い道の北にある。
謎の巨人は身の丈70bであるが、だれがいつ描いたのか不明である。元来、草地に引かれた線を、
白いセメントブロックで補強され現在に至っている。サウス・ダウンズ(South Downs)の小径を適当に
ウォーキングしていて、こういう風景に出会うのも旅のおもしろさといえるかもしれない。
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先は遠いが、進むべき道は一つ。
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ライ(Rye)のマーメイド・ストリートには玉石が敷き詰められている。急な坂道だが散策して楽しい。
小径から見上げると顔をのぞかせる教会、木組みの民家、中世の城門など見るからにしっとりして
心がやすらぐ。ライはかつて港であったが、徐々に海が引き、現在は町の4q南に港がある。
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ライの北側のランド・ゲイトは14世紀半ばに建てられたゲイトのうちの一つ。
あとの三つのゲイトはすでになく、この城門をくぐると旧市街へ。
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セント・メアリー教会の屋上からの眺望
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セント・メアリー教会からの眺望。蛇行するティリンガム川(R.Tillingham)のようすがわかる。
右側はイプラ・タワー。13世紀半ば、フランスの侵入を防ぐために建造された要塞の一部。現在は博物館。
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サウスボーンはボーンマス(Bournemouth)とクライストチャーチ(Christchurch)
の間にあり、思わず車を停めてカメラのシャッターを押したくなるような
きめ細かい砂浜が続き、淡雪のホイップが打ち寄せる美しい海岸である。
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トマス=ハーディの生家はドーセットの州都ドーチェスターの東北東6キロに位置する。
トマス=ハーディ(1840−1928)の作品には自然が主人公のように記されている。
この家は1801年に曾祖父が新婚まもない祖父母のために建てた。
当時、周囲に何もない一軒家であったが、徐々に家が建ちはじめ、その後ここが
ハイアー・ボックハンプトン(Higher Bockhampton)となった。以下はハーディの文。
『わが家はひとつ離れて立っていた。あの背の高いモミやブナは自然に生えていた。
ヘビやイモリは夏の日々に群がった。夜ごとにコウモリが寝室を飛び回った。
野生の馬は丘に住み、わたしたちの唯一の友であった。ここに初めて居を構えたとき、
それほど自然のままだった。』(ハ−ディの「生家」より抜粋)
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ウェラム(Wareham)の南7qに屹立する1000年の廃墟コーフ城。清教徒革命のころ(1646)、
議会軍によって壊滅状態になるまではイングランド王家の重要拠点の一つであったという。
霽れた日には、東北東の方向にパーベック(Purbeck Heritage Coast)の奇観を一望できる。
(上の画像はコーフ駅から臨む城)
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コーフ城に近いイースト・ストリートにあるホテル。16世紀以前の創建ということだが、
1666年にコーフ城の石を取って増築されたらしい。緑色の看板には
料金ではなく、朝食は8:30ー9:30、モーニング・コーヒーは10:00ー12:00、
ランチは12:00−2:00、ディナーは7:00−9:00といったことが書いてある。
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シャフツベリー(Shaftesbury)はソールズベリー(Salisbury)から32q西に位置する
人口6700人ほどの町。ここに来る旅人の目当ては急勾配のゴールド・ヒルです。
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パーベックの反対側、ウェラムからドーチェスターに向かうA352の途中
WoolでB3071を南に約8qほど行くとダードル・ドアの奇岩と出会う。
恐竜がまどろんでいるようにもみえる。
このあたりにも白亜層の崖が連なっていて、海岸線の景観は必見。
ドーセットには見るべきものが多く、滞在日数は多めにとるほうがよい。
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ドーセット州のウェイマスには古くからの海水浴場もあるが、海岸をすこし入った場所、
ウェストウェイ・ロード(Westway Road)にカラフルな家並み(画像)が連なり魅了される。
Weymouthは「ウェイ川の河口」という意味で、Dorchester(chesterは城の意)に向かうローマ街道の起点。
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英国に関連する各処や「ヨーロッパ旅行記」に何度か綴ってきたことであるが、
ガイドブックに掲載されることはないイングランドの魅力は、
A地点からB地点へ至る道中に息をのむ風景が点在するというところにある。
チェシル・ビーチ(Chesil Beach)はウェイマスからライムリージスまで約45qにわたって弓なりに続く海岸。
途中、アボッツベリー、バートン・ブラッドストックなどの美しい村が点在する。画像の道路はB3157。
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眠ったような午後、B3157沿いのアボッツベリー。
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アボッツベリーから8qほど西にあるのがバートン・ブラッドストック村。
ここからA35経由A3052を12qほど行けば、「フランス軍中尉の女」の舞台
となったライム・リージス(Lyme Regis=ドーセットとデヴォンの州境の町)がある。
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その名の通りライラックが咲いていた。
村の人口は約1000人。パブが2店。
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2013年、英国で放送されたミステリードラマ「ブロードチャーチ」の舞台となったブリッドポートのウェスト・ベイ(West Bay)。
本邦でも2014年9月WOWOWで放送されたのをみた。「ブロードチャーチ」の英国での高視聴率もうなづけるできばえ。
ロケーションのすばらしさはドラマの成功に寄与する。 (ブロードチャーチ=Broadchurchは架空の地名)
ブリッドポート(人口約13000人)はバートン・ブラッドストックの4キロ西に、ウェスト・ベイはブリッドポートから南へ約2キロの地点に位置。
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夕暮れの風景をながめているだけで旅に出て報われたと思うことがある。
そこがドラマの舞台になっているとなればなおさら。「ブロードチャーチ」は英国のミステリードラマの面目躍如である。
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9月の海は静かなのはいいけれど、健康的であっけらかんとしている。
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メリル・ストリープス主演の映画「フランス軍中尉の女」の舞台となった町。ブリッドポートの西17キロ。
メリル・ストリープが最も輝いていた時期の作品であり、役柄、演技など秀逸。
出来が良すぎて、その後の作品はすべて駄作といっても過言ではない。
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「フランス軍中尉の女」のワンシーンでメリル・ストリープはこの先端に立って男の帰りを待つ。
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チャーマスはドーチェスターから35kmほど西、ライム・リージスから3kmほど東に位置する
人口1500人ほどの小さなリゾート地。夏期は賑わいをみせるが6月は人もまばら。
ここまで来るとデヴォンは目と鼻の先。
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ライム・リージスからA3052を西へ15qほど進み、Branscombeを示す標識を左折して、
2q南下すればブランクーム海岸。崖と海と、放牧中の牛などが織りなす、絵のような風景。
そこにしかない風景は国内外どこにでもあるということでしょう。
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シドマス(Sidmouth)はブランクームの西6qの地点にあり、東デヴォンの名所となっている。
赤茶けた岩肌がむき出しの断崖に沿って遊歩道が整備され、セブン・シスターズの白と対照的。
彼方にブランクームの白い崖をみてとれる。この光景も忘れがたい。シドマスから歩く人もいる。
シドマス(砂浜)とブランクーム(小石)の浜違いが目につく。
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シドマスはガーデンテラスからの眺めも格別。
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コッキントン村(デヴォン州)には17世紀のイングランドがそのまま保存されている。
茅葺きの屋根の素朴なティーハウス(中央ピンク壁)。アガサ・クリスティーが、故郷トーキー
から1マイルほど西のコッキントン村まで乗馬服に身を包み、颯爽とやって来たという。
右側茶色の家はウィーバーズ・コテージ。18世紀末〜19世紀初頭まで機織り職人の仕事場&住居だった。
(Weaverは機織り職人の意) 現在はティーハウス。
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思わず立ち寄りたくなるギフトショップ。かつては村の鍛冶屋だった。
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ペイントン(Paington)はトーキー(Torquay)とブリクサム(Brixham)の中間にあって、
イングランドのリビエラといわれているが、リビエラ海岸のような高級リーゾート地ではなく、
庶民のリビエラであるところがいい。ペイントンは気さくで落ち着いた町である。
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コールトン・フィッシュエーカーはペイントンの南11qにあって、南デヴォンの海を見下ろす絶好のロケーション。
庭園の敷地は約3万7千坪。林道をめぐるミニ・ハイキングも可能。
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断崖の窪地のようなスペースを巧みに利用して主に亜熱帯植物を植えている。
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コールトン・フィッシュエーカー・ガーデンの林道
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サウス・ウェスト・コースト・パスを歩いてきたハイカーもいて、眺めのいいテラスで一休み。
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南デヴォンのなかでもこのあたりは特に風光明媚なところとして知られている。
1982年以来、コールトン・フィッシュエーカーはナショナル・トラストが所有。
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ダートムーアの名の由来は、ここを水源とするダート川(River Dart)と荒地(moor)である。
延べ面積945平方`に及ぶ広大な花崗岩台地は、泥炭と吸湿性に富んだ芝草におおわれている。
そしてムーアで人々は生活を営み、コナン・ドイルは「バスカーヴィル家の犬」の舞台にした。
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バックファスト修道院は、ダートムーア南東部の小さな町Buckfastleigh(バックファストリー)の3q北にある。
1016年の創設で、中世は毛織物貿易に関わって繁栄したが、1539年の修道院解散令後、廃院に。
現在の建物は、1882年にフランスから亡命してきたベネディクト派修道士の一団が、1906〜1938年
に建てた英国最後(おそらくは)の修道院。左側の松の枝葉が邪魔で見えないけれど、聖堂の
ステンドグラスに描かれたキリストが、画像手前チャペルを睥睨するかのごとく見下ろしている。
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バックファストリーから小道を1時間ほど歩けばブローデンプトン村に着く。
軽いウォーキングにはもってこいの距離で、のどかな田園風景を満喫できる。
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ソルクーム(Salcombe)のクーム(combe)は「谷あい」というほどの意味だが、その間を
流れる川の両側に拓けたのがソルクーム。川の上流は七角形放射状に囲まれた湖
の様相を呈している。そういう地形の複雑さに較べれば穏やかな町だ。
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人口440人ほどのクロヴェリー村はデヴォン州北西部に位置し、夏は旅行者で混み合う。
丸石を敷き詰めた急坂(メイン・ストリート)から見下ろす海の魅力(絶景)に惹かれるからだ。
一歩上るごとに海への眺望がひらけ、碧い海面の向こうには紫がかった銀色の島が佇んでいる。
(丸石は降雨のさいの水はけが良く、早く乾くといった利点がある。)
この村に入るには入場税が要る。環境保全のための目的税である。
クロヴェリーからA39を16q南南西に進めばビュード(Bude)、即ちコーンウォールである。
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クロヴェリーの表道を歩くより、裏道を歩くほうが楽しい。上り坂は勾配がきついけれど。
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南イングランドの海岸ではライフボート・プロジェクトの小型ボートが人命救護、安全維持のためパトロールしている。
RNLIは王立救命艇協会。1824年、難破船の乗員救出を目的として設立された慈善団体。
RNLIのスタッフのほとんどはボランティアで、活動資金は地方自治体が提供。創業以来、約14万人を救出したという。
RNLIは Royal National Lifeboat Institution の略。
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