英国王のなかでスコットランドに対して最も残虐行為をおこなったのは、私の知るかぎりエドワード1世である。13世紀、スコットランド最大の町はベリック・オン・トゥイードで、エドワード1世はベリックで兵を止め、前例のない大虐殺をおこなった。
市内をことごとく略奪し、男女の別なく殺戮し、犠牲者は1万7千人に達したという。(現在ベリック・オン・ツウィードの人口は約1万3千人) 加えてエドワードは死体を放置しておくよう部下に命じた。その異臭に反抗的スコットランドの人々も、誰が主人か思い知るだろうとの非道の措置であった。
スコットランドの長い歴史のなかで、これほどみじめな時代はなかった。そのとき立ち上がったのがウィリアム・ウォレスだった。ケルト系小地主の息子ウォレスは、イングランド軍の酷い蛮行に憤り、スコットランドを救おうと立ち上がったのだ。
グラスゴー出身の作家ナイジェル・トランターによると、ウォレスは「戦火で一つに鍛えられ、自由のために戦う」という概念を掲げて登場したのである。愛国精神などというが、当時のスコットランドには国民とか民族とかの概念はほとんど存在せず、ウォレスがそれを持ち込んだといえるのかもしれない。
1995年に製作された映画「ブレイブハート」でメル・ギブソンがウォレスを演じている。スコットランド・ロケにこだわったこの映画は、いまもなおハイランドにおいて根強い人気を保っている。ウォレス記念塔への急な坂道を登っていたとき、地元の小学生(男児)に声をかけたが、その子はウォレス役のギブソンのまねをして雄叫びをあげたのだった。
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