イースト・サセックス州ノーシャム(Northiam)はライの北西12キロにある人口約2000人の小さな村だ。ノーシャム村の名が
国内外の庭園愛好家に知られているのはひとえにグレート・ディクスターの存在ゆえといっても過言ではない。
グレート・ディクスターの歴史は1220年までさかのぼり、1464年エッチンガム家が木組みの家が建て増しされ、その後の有為転変
と荒廃に身をまかせてきた。
 
1910年ナサニエル・ロイド(1867−1933)がここを購入したのは幸いというべきである。彼はケント州に所有していた
16世紀建造の邸宅を移動して1464年築のハウスと併せる工事建築家エドウィン・ラッチェンス(1869−1944)に依頼する。
ナサニエルの子クリストファー・ロイド(1921−2006)は6人兄弟の末っ子で、母デイジーからガーデニングの手ほどきをうけた。
見取図  グレート・ディクスター
見取図  グレート・ディクスター
この見取図を見るとグレート・ディクスターの概容がのみこめる。入口は北にあり、メイン駐車場は西と南西の2箇所。
南西側の駐車場からナーサリーが近い。ナーサリー(Nursery)は種、苗木を育てて売る園芸店。
 
前回、グレートディクスターを訪れたのは2012年6月、今回の再訪も2018年6月。初夏のイングランドは美しい。
 
 
 
 
 
 
 
グレート・ディクスター
グレート・ディクスター
 
 
 
グレート・ディクスター
グレート・ディクスター
 
デイジーは末っ子クリストファーに庭園の手ほどきをしたが、同時に著名だった女性造園家ガートルード・ジーキル(1843−1932)と会わせ
ジーキルの発想を学ばせた。当時クリストファーは10代前半、ジーキルは最晩年である。ガートルード・ジーキルは半生を画家・工芸家として
残りの半生を造園家としてすごしている。造園家に衣替えしたのは眼病をわずらったからだ。
 
ジーキルはそれまで一般的であった風景重視の英国式庭園ではなく、自然と自生植物を前面に出す作庭を提唱していた。
ジーキルの発想がデイジーとクリストファー母子に影響をおよぼさないはずがない。ガートルード・ジーキルはこんにちコテージガーデンと呼ばれる
庭をすでに創りあげていたのだ。そしてまたジーキルは作庭に関して絵画の色彩法をとりいれる。四季によって空気も花も色が変化するという
テーマを庭づくりに実践してゆく。以上がイングリッシュガーデンの原型となる。
 
 
 
ヒメシャラ(夏ツバキ)
ヒメシャラ(夏ツバキ)
 
 
 
 
 
 
 
トピアリー(刈込みによる造形物)が雑草勢力に押され気味。そういう意図もあって、わざと雑草を刈っていないのだろう。
 
 
 
 
見学しているうちに雲行きが怪しくなる。
 
 
 
ナサニエル・ロイドと妻デイジー
ナサニエル・ロイドと妻デイジー
ナサニエル・ロイドの妻でクリストファーの母デイジー・デボラ・ロイド(1880−1972)は
夫とのあいだに6人の子をもうけた。末っ子のクリストファーはデイジー40歳時の子である。
(デイジーは1880年10月10日、クリストファーは1921年3月2日誕生)
 
 
 
雲の動きが早い。曇ったと思えば陽がさし、陽がさしたかと思えば雲におおわれる。
 
 
 
こういうアングルで撮ると、花の勢力のうしろに後ずさりしたハウスがひっそり佇んでいるという案配。
 
 
 
快晴より薄曇りのほうが光と影のコントラストがなく撮影はしやすく、発色も安定している。が、明暗を狙った立体的な写真は期待できない。
 
 
 
特筆すべきは、クリストファー・ロイドとベスチャトー(1923−2018)が庭園を通じて親交のあったこと、そしてベスチャトーの言によれば両者が造園をめぐって
何度か激論を交わしたことである。それこそが出版に値する庭園論であるだろう。
 
20世紀最後の名ガーデナーといっても過言ではないベスチャトーは2018年5月13日、94歳の生涯を閉じた。ベスチャトーほど砂利や昆虫、泥と友だちになった
女性造園家は少ないのではないだろうか。手袋もせず素手でトゲを取り、ミミズをバケツに入れ、泥をさわっていたすがたがなつかしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
勢いのいい夏草にまじって老犬一匹。自分のすがたもかくありなん。
 
 
 
 
 
いまなら庭園めぐりも人混みと無縁だが、何年後かに中国でガーデニングがブームにでもなったらタイヘン。
グレート・ディクスターのような有名な庭にチャイニーズがどっと押し寄せ、花は苗ごと持ちさられるかもしれない。それに彼らがいるとやかましい。
チャイニーズが庭園のよさを理解できるとは思わないけれど、ブームはこわい。山ガールがあれば庭ガールということも。
 
 
 
 
 
 
繁茂するに任せているという風情。子どものころの夏の畑を思い出すステキな庭。
 
 
 
 
 
 
 
グレート・ディクスター
グレート・ディクスター
四方竹のような細竹のうしろに細長い四阿。イングランドには竹を植えている庭園が多くみられる。
 
 
 
 
 
 
東南アジアふうの亜熱帯林。
 
桂離宮・月波楼の天井ほどの精巧さ、緻密さ、美しさはないけれど、がんばっている。
 
 
 
 
ナーサリーの掲示板
ナーサリーの掲示板
 
 
 
ナーサリー入口
ナーサリー入口
正門からもここナーサリー入口からも入れる。ナーサリーは種、苗木を育て販売する園芸店。
 
 
 
ナーサリー グレート・ディクスター
ナーサリー グレート・ディクスター
さまざまな野菜も売っていた。
 
 
 
グレート・ディクスター
グレート・ディクスター
 
 
 
 
 
 
グレート・ディクスター
グレート・ディクスター
 
 
 
 
 
 
庭園というより小さな村の小道、あるいはフットパスを歩いている気分になる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
グレート・ディクスター
グレート・ディクスター