コーンウォール半島北部の町ポート・アイザックは邦人やチャイニーズなどは勿論、欧米諸国の観光客にもほとんど知られておらず、
その分、喧噪とは無縁で、人疲れすることもなく、ゆっくり散策をたのしむことができる。住民約720人はおおむね昔からの知り合い、
漁師や小さなB&B、バブ経営者が多く、B&Bは英国人旅行者、バブは地元住民と旅人が利用する。静寂、のどかを好む旅人向き。
 
時は初夏、漁を終えた漁師は陸に上がっている。観光客と出会うこともなくのんびりと風景を眺める。
ポート・アイザックの北東12キロにはガイドブックに載る伝説の景勝地ティンタジェル城があり、観光客も押しよせるが、
ポート・アイザックに関しては町の存在すら知らない。そこがいい。桟橋の向こうは大西洋。
 
時刻が移れば潮も移り、太陽の動き、雲の量などで海辺の景色は微妙に変化する。古い家並みを見ているだけで時間は過ぎてゆく。
 
ポートアイザック出身の漁師10人でつくられたフィッシャーマンズ・フレンズという歌グループは、1995年から慈善活動の資金集め
のために歌手活動を開始した。歌は地元に伝わる舟歌。2010年、アイランド・レコードと約100万ポンドに契約を交わし、彼らの
アルバム「ポート・アイザック フィッシャーマンズ フレンズ」がゴールド・ディスクとなる。
 
フォークソングのアルバムが英国ヒットチャートで史上初のトップ10になる。その経緯は映画「フィッシャーマンズ・ソング」に詳しい。
※舟歌はシー・シャンティ(Sea Shanty)と呼ばれ、特に有名なのは「酔いどれ水夫」※
 
4〜5世紀、大陸から侵入したサクソン人によってブリテン島の先住民ケルト人は西へ追いやられ、コーンウォール半島へ
来たケルトがコーンウォール人の祖先。中世以降、コーンウォールはイングランドに取り込まれながらも独特の文化、伝統を
保って(コーンウォール語もその一つ)いる。
 
エリザベス1世が亡くなった後、ヴェネチア大使は、「女王はイングランド人、ウェールズ人、コーンウォール人、スコットランド人、
アイルランド人の5つの人種を治めていた」と記しているとか。
 
 
 
漁師の主な獲物はロブスターとカニ。ロブスターの罠籠を引っぱりあげるだけでも重労働。海上の小船はいつも揺れているし、籠は重い。
 
路地を歩いていてもすれちがう人はすくない。観光客も目にしない。静かであることが心地よい。
 
半日の滞在でも親近感を持てるのは小規模ゆえ。どの路地に何があるかをおぼえやすい。
英国の小さな町や村を再訪したくなるのは、わかりやく、記憶に残るからだ。
オールド・スクール
オールド・スクール
 
「The Old School」という名のホテル&レストラン。建物は1875年に建設。宿泊室数は12。
 
日曜のランチ
日曜のランチ
 
見てのとおり、日曜12時半〜3時のランチ。
セットメニューは料理二つで約1500円。
 
オールド・スクールの裏から見るといかにも古いことがわかる。煙突の煤が積ったようなスレートの屋根にコケがはえている。
おちびさんが食べているのはコーニッシュ・アイス。コーンウォール特製のアイスクリームはうまい。
料理人
料理人
民家
民家
 
白いブラインドとブルーの窓枠のあいだに緑色の何か。白の壁がスペインの田舎、もしくはエーゲ海の島ふう。
 
 
民家
民家
貸別荘
貸別荘
  
ホニー・コテージという名の月決めB&B。1週間単位で貸し出し、シーズンによって料金は異なる。
最も安いのは1月中旬から4月上旬にかけての週450ポンド、最も高いのは7月中旬から8月中旬の週1000ポンド。
 
クラシック・カー
クラシック・カー
 
 
路地
路地
 
 
民家
民家
 
あとから足したと思われる出窓。白漆喰がアンバランスだけれど妙になじんでいる。
 
ゴールデン・ライオン
ゴールデン・ライオン
 
パブ「ゴールデン・ライオン」はポート・アイザック住民のたまり場的存在。運転から解放されたらビールを飲もう。
「フィッシャーマンズ・ソング」(2019英国 2020年1月・日本公開)に漁師たちが語らう場面も何度か出てくる。
 
営業は月〜木&土 12:00〜23:00 金 12:00〜深夜 日曜 12:00〜22:30。コーンウォールふう魚介料理。
 
ゴールデン・ライオン
ゴールデン・ライオン
 
 
 
地元の中高年が常連のカフェ。
 
ポート・アイザック・フィッシャーメン有限会社。早い話、漁業組合。
併設店で獲れたての魚介類を売っている。
 
 
漁師の道具は一括してこの場所に収納されており、魚箱、網、籠類を持ち出して船に向かうようすは、
英国映画「フィッシャーマンズ・ソング」に登場。漁師なんてやるものではありません。
 
強靱な肉体と精神がなければ務まらない。なのに会話のはしばしに出てくる軽口とユーモアはすばらしい。
 
クラブ・ロブスター
クラブ・ロブスター
 
クラブ・ロブスターという名のキッチン付B&Bの裏側。B&B「クラブ・ロブスター」は主に家族やグループが利用する。
 
引き潮のポート・アイザック
引き潮のポート・アイザック
 
 
日没のポート・アイザック
日没のポート・アイザック
 
 
朝のポー・トアイザック
朝のポー・トアイザック
 
前日と対照的に観光客がちらほら。それでも静寂は保たれている。
 
朝のポート・アイザック
朝のポート・アイザック
 
 
 
朝のポート・アイザック
朝のポート・アイザック
 
 
 
ニューキー
ニューキー
 
ポート・アイザックからB3267を南下し、B3314を右折、西南へ進みA39に出てさらに南下。B3059を西方向へ。
起点から約42キロ、1時間ほどでニューキー到着。
 
ニューキー
ニューキー
 
ニューキーの浜辺はサーファーで賑わい、、そんなことは知らん顔の目抜き通り。ポート・アイザックに較べると人疲れする。
 
海浜は若者で占められ街中は中高年が多い。浜辺は年寄が、アンバランスなところがいかにもコーンウォール。
ニューキー
ニューキー
 
人間よりカモメのほうが数多い。干潟の船は出航できず、カモメもエサにありつけず、所在なさげ。
旅の始まりは興奮、終わりは安息と言いたいところ、そうとも言えない。
 
カモメはまもなく一斉に飛びだち、しばし残るカモメもおり、年老いた旅人は飛ぶことも残ることもない。
1999年〜2018年におよぶ英国の旅20年は束の間。一瞬は刻まれ、飛び散り、時は過ぎてゆく。