2022年11月7日      赤ひげ4
 
 11月4日(金)人情時代劇「赤ひげ」のシーズン4がはじまった。
時代劇贔屓は70歳以上が占めていると思われるのか、どの放送局もそっぽを向くご時世、「赤ひげ」のように良質で、登場人物が魅力的な連続ドラマは貴重。
 
 小石川養生所の医師、下働きの女たちはうわべを飾らず気取らない。貧しい人々に手をさしのべる。江戸の人間は東京の人間とちがって甘っちょろい孤独に埋もれず、無駄口を叩きながらも医療に専念する。
 
 なんでもわかっているかのようなクチをきき、手をつけもせずできないと決めつける生意気は養生所に向かない。やってみて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじと言ったのは誰だったか。
 
 21世紀の若者はほめても動かない。冷めている。赤ひげはめったなことで若い医師をほめない。が、彼らはついてゆく。なぜかはドラマをみればわかる。さぼったり弱音を吐くと赤ひげにどやされる。
「赤ひげ3」で描かれなかった養生所の医師全員でメシを食うシーンも復活した。メシの時間はリラックスタイム、なごやかなムードに包まれ、何気ない会話がおもしろい。テンポがよく、43分のドラマは20分くらいに感じる。
 
 治療は無料だが薬は問屋から買わねばならない。養生所のダイドコは火の車。金策は赤ひげの役目で、金持ちからカネをふんだくる。
医師の保本(中村蒼)、津川(前田公輝)、医師見習い田山(鈴木康介)のイキが合っている。食事のシーンにもそれぞれの持ち味が出る。医者の診察を受けたくても貧しくて受けられない患者や、身元がわからない急病人の治療。ホッと息をぬけるのはメシの時間。
 
 スジを通したくてもできない事情をかかえている庶民が養生所にやって来る。一緒に悩んでいると疲労もたまる。しかし悩まざるをえないからドラマになる。スジの通らないことは人生につきものである。
こうだからああ、ああだからこうと理屈に合うなら人生は楽。ドラマ赤ひげがすぐれているのは、理屈を言わず、相手と真摯に向き合い、情理を尽くすことで相手が気づくという点にある。事なかれ主義の人間とは真逆の姿勢を貫く。
 
 第一話の最後に戸田菜穂が養生所に運びこまれる。戸田菜穂は芝居がうまい。次回以降が楽しみ。

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