2025年4月21日      あきない世傳 金と銀(2)
 
 待ちに待った「あきない世傳 金と銀」の第二章がはじまった。時代劇ファンにとって、特に人情時代劇贔屓としてうれしさいっぱい。高田郁の原作、山本むつみの脚本が秀逸で、キャスティングも抜群。出演者全員がドラマのすばらしさを理解していると思われ、新たなゲストも気合いが入り、いっそうおもしろくなった。森田美由紀のナレーションも冴えてる。
 
 大坂商人の才覚と性根、人情をうまく表現できるかどうか、「五鈴屋」のご寮さん幸(さち)を支える人々の情も篤い。最初から情を示すのではなく、ここぞというときを見澄ましたように発揮する。突然の病で「五鈴屋」番頭を引退する治兵衛(舘ひろし)の女房役、誰かと思えば細川直美だった。
 
 大坂天満(てんま)の呉服屋も借金せねばならないこともあるし、手形が不渡りになることもあり、現状維持で立ちゆかないこともある。
経営を引き継いだ桔梗屋の屋号をどうするか、将来のプランを練り経営拡大をめざす幸(小芝風花)の才覚と情が試される。才ある人は次から次へとアイデアが生まれる。才覚とはそういうものだ。そして情ある人は心をつかむ。
 
 呉服商は着物も帯もアイデア勝負。売れ筋を仕入れるだけでは競争に打ち克つのは難しい。売れ筋をつくっていくのが幸の本分。ドラマティックなドラマは、脚本、演出、キャスティングを工夫し、視聴者を魅了する。幸の夫役松本伶生がどんどんうまくなっている。
 
 歌舞伎「勧進帳」の長唄に「人の情けの盃を 受けて心をとどむとかや 今は昔の語り草」というくだりがある。弁慶と安宅関守・富樫の丁々発止のやりとりは勧進帳の見せ場。台本作者のうまいところは、義経弁慶主従に平家方の富樫をからめ、人情譚に仕立て上げた点。
「あきない世傳 金と銀」は主人と奉公人の義理人情を巧みに描き、それぞれに合うせりふを振りわけている。女衆(おなごし)のお竹(いしのようこ)の芝居、せりふ回しに感心し、幸の妹お才が名作ドラマで成長していく姿に注目。これから出演予定の俳優はオファーを受けて喜んだことと思われる。
 
 高田郁著「あきない世傳 金と銀 特別巻(上)」の「百代の過客」のなかで幸がお竹に言う。「あなたの運針や帯結びの技、着こなしの才、それにその心根が江戸店には必要です。女衆としてではない、私の片腕として、一緒に江戸へ行ってほいいのです」。お竹の面目躍如の一文である。ドラマでも「いしのようこ」はその面目に違わず好演している。
 
 五鈴屋の反物を風呂敷に包み、背負って行商に出る2人のうち辻本祐樹がいい。出立時の表情、雰囲気はいかにも行商人。初印象は大切。誠実で親切な行商人なら商品も間違いないと思ってもらえる。65年前そういう行商人がいた。
 
 辻本祐樹は時代劇ドラマ「銀二貫」でも手代を、大河ドラマ「清盛」で平重衡をやり、「忠臣蔵の恋」で尾張藩4代目当主・徳川吉通(よしみち)もやった。
「大富豪同心」で殺人剣をつかう異形の公家・清少将もやったが、「あきない世傳 金と銀」の手代役でガラリと変わる。武士でも町人でも見事に演じる。
 
 4月20日放送分で2年間の行商のあと五鈴屋へ帰ってきた。反物は完売。幸は彼らをねぎらう。反物を包む五鈴屋商標が染められた大風呂敷、小風呂敷の汚れがひどい。買った客に小風呂敷を贈ると喜ばれる。桔梗屋の番頭役で泉澤祐希が新たに加わり、フレッシュでまじめな気質を持つ役をこなす。
 
 現代社会の味気なさは経済的豊かさ、自由と無関係ではない。使用する側とされる側は別々に暮らす。時代劇で両者は同居し、密接な関係を築いている。無干渉が常態化する21世紀と較べて、雇い主と奉公人が助け合い、互いを引き立て、せちがらい世の中を生きてゆく姿に打たれる。
五鈴屋江戸店を開く運びとなり、朗らかで明るい幸が出会う人々、せりふのやり取りが楽しみ。歌舞伎役者になって出てくる俳優もいる。本日はこれ切り。

前のページ 目次 次のページ