エル・エスコリアル
エル・エスコリアル
スペイン最大規模(206×161b)といわれる修道院エル・エスコリアルへ行ったのは87年3月、底冷えのする日だった。
この地の1065bという標高が気温の低下を招いていた。そしてその寒さは、修道院内の霊廟によってさらにつのった。カルロス1世以降のスペイン国王と親族全員(フェリーペ5世、同6世は例外)が埋葬されており、無数の棺が鎮座ましましている。棺はたいてい大理石であるが、青銅の棺もあったと記憶している。
 
とにかく寒かった。身体の芯まで冷えた。修道院の中より外のほうがマシだった。院内の喫茶室で飲んだカプチーノは舌がやけどするほど熱かったが、その熱さが冷え切った身体にはちょうどよかった。ふだんなら味の濃さに閉口したと思うが、この日ばかりはexcellentだった。
 
私たち夫婦は、あの日のエル・エスコリアル観光を「棺桶ツアー」と呼んでいる。
 
塩の山
塩の山
イビサ島(Ibiza)は20年ほど前までヒップな若者のたまり場であった。
Hipとは1960年代後半に米国などに出現したヒッピー(hippie)の流れを汲んでおり、hipの「最近の流行に明るい」という本来の意味からはずれて、「夢中になる」、「取り憑かれる」というほどの意である。
 
おあつらえ向きの塩もいっぱいある。塩でもなめて目を覚ますか、塩で身を浄めて普通人にもどればとも思うのだが、ヒップな連中を見たくてイビサに来る者もいないわけではない。セス塩田は南部の自然保護区にあって、眺めの良い景観が周囲に点在する。
 
チンチョン
チンチョン
マドリードから車で1時間の距離にあるチンチョンは人口3900人ほどの小さな町。
Chinchonという名のパラドールはマドリード県内唯一のパラドールで、町の中心マヨール広場からすぐのところ。チンチョンはトレドやアランフェスにも近く、地の利に恵まれている。
 
マドリードにはプラド美術館があるけれど、チンチョンに宿をとってプラドでゴヤの絵をみるというのも一つの方法である。
 
17世紀、チンチョン伯爵夫人(ペルー副王の妻)は、インディオがキンキナの樹皮から抽出した薬で熱帯病を快復させていることを知り、その製法をヨーロッパにもたらした。
それが1820年のキニーネの発見につながった。そういう経緯があったからなのか、スウェーデンの学者リンネはキンキナにチンチョンという学名を与えている。
 
ところで、上の画像はマヨール広場がわずかに見え、広場を囲んで3階建ての建物に3層のアーケードがあり(画像中央)、夏になると広場は闘牛場となる。
 
小さな町、小さな広場にも様々なドラマがあって、様々な人生、夢があった。これからもまた多くの人々の夢を紡いでゆくだろう。
いまだ私は夢の途中にあり、来歴は定かではない。
 
 
サン・ラファエル
サン・ラファエル
イビサ旧市街
イビサ旧市街

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