時間の推移とともに刻々と変わる光と影。光と影の配分や変化で微妙に
変わりゆく様々な色。一日中つきあっても飽きることはなかった。
絵具をチューブからしぼり出し、パレットにのせて、目に映る色に近づくよう
工夫して色をまぜ、背景と主たるモチーフの配色について思いをめぐらせる。
そしてキャンバスに向かい、パレットナイフと筆で色をおいていく。
ところが、仕上がった絵の色と目に映る色とはまるで別物なのだ。
目に映るものほうが遙かに美しく、生き生きと、しっとりとしているのである。
時間を切り取るということの難しさ。光と影のなんともつれない態度。
色のまざり具合を工夫し、すったもんだのあげく思い通りの色を出せたときの喜び。
思い通りの色とは、目に映った風景の色と、心に映ったそれとが一致したときの色だ。
自分と風景が一致したことを感じとる歓び。それなくして誰が絵など描けよう。
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