2023年11月27日    山陽道おんな二人旅
 
 2023年11月13日午前、岡山広島2泊3日に旅立った伴侶は正午過ぎ、JR倉敷駅バスターミナルそばにある小さなホテルで学生時代の友人ハムと待ちあわせました。二人の旅が決まったのは7月中旬。
 
 ハムは信州を提案し、伴侶は金沢を奨めましたが、信州は東京から近いけれど関西からだと時間がかかるので却下。 
 
 金沢は落ち着いた町で、しかも飲酒と魚介が好きな友人にうってつけと思えたからです。
 
 ところがハムはその年の5月中旬、広島サミットが催されたホテル(グランド・プリンス広島)の料理をテレビで見ていて、あのホテルへ行きたい、あそこで食事したいと言う。幾つになってもテレビっ子。
 
 伴侶はそのホテルの2食付きプランを予約。JR広島駅からの専用シャトルバスの出発時間も調べました。
 
 「ハム、学生時代にテルミちゃん(高校時代の共通の友人)と3人で広島に行ったよね」。「‥‥??」。「宮島の写真もあるからスマホで撮って送るね」。「‥?」。結局ハムは広島へ行ったことを思い出せなかったそうです。
 
 「岡山城も後楽園も行きたい。しまなみ海道を自転車で渡りたい」と言う提案は却下。脚力のないハムにしまなみ海道サイクリングは無理。
後楽園は広いし、岡山城のはしご階段はきつくハムに向いていない。ハムは倉敷美観地区へ行ったことがないので歩行距離の少ない美観地区に決定。
 
 ハムが利用した羽田・岡山空港への便も、空港から倉敷駅行きのバスも遅延なく運行。朝が早かったハムは待ちきれず倉敷商店街の喫茶店に飛び込みスパゲティ・ナポリタンを、伴侶はおいしくない和風スパゲティを食べました。
 
 美観地区を観光後、岡山経由瀬戸大橋線で児島へ行くより倉敷=児島の直行バスのほうが楽と判断して乗車。50分強で児島に着くはずが、途中の停留所すべてで下校の中高生が乗り降りし、1時間25分もかかった。バスのなかで連絡した送迎バス(せとうち児島ホテル)は児島駅に見当たらず、再び連絡したのですが来ない。
 
 あたりを偵察した伴侶がやっとバスを見つけ、約10分乗車して午後5時20分、30数年前に泊まったことのある「せとうち児島ホテル」着。高台に位置し、部屋から瀬戸内海と瀬戸大橋が望めます。伴侶が予約した1泊2食付きのプラン。
館内日本料理店の会席料理は前菜、向付、焼物、煮物、八寸、揚げ物、鯛飯、デザート。特に八寸が豪華で美味。酒好きのハムはビール2本、ワイン赤白を飲んでご機嫌。
 
 翌日午前、児島観光港の遊覧船に乗船。瀬戸大橋の下をくぐって45分で帰港。船に乗りたいというハムの希望をかなえてあげました。ハムは一日で倉敷、後楽園、しまなみ海道をめぐり、瀬戸内観光船にも乗ることができると思っていたようです。現地へ行ってムリだとわかり、「地図がアタマに入っていない」と言う。瀬戸大橋の下を遊覧船が通過したとき、伴侶が、橋には坂出(四国)への道路と線路が走っていると説明。
 
 下船し、児島駅から瀬戸大橋線で岡山へ向かおうとしていたら、トイレから帰ってきたハムが児島駅案内所で聞いたのか、「坂出まで15分くらいで行けるそうよ」と四国に渡りたそうな気配。坂出へ行くと日が暮れ、広島駅〜ホテルのシャトルバスがなくなるので却下。
岡山から広島駅へ新幹線で行き、駅近の牡蠣料理店で遅めのランチ。ハムは生ビールをぐいぐい。駅前で15時40分発のシャトルバスに乗ってグランド・プリンス広島へ。16時10分過ぎにホテル着。
 
 17時台半ば館内のクリスマス用デコレーションを見ていたら、100名以上の高校生らしき集団がどやどやと入場してきた。修学旅行でこういうホテルに泊まるようになったのかと時代のちがいを実感。10月中旬、夕食で利用した京都プリンセスホテルも修学旅行の女子高生が泊まっていました。
 
 敷地内の庭園とブティックを見学し館内のレストランで洋食。大食いのハムはビールを飲んだ後ワインのあてに牡蠣料理を追加注文。2日目の夜もよく飲み、よく食べた。
朝食は館内「なだ万」の和定食。ホテルから徒歩2分の港で高速船に乗って宮島へ。宮島まで30分弱。ホテルのフロント横のトラベルデスクで船賃を支払う前、ハムが「えっ、無料かと思った」。ツアーで行くとそういうプランもあるようです。
 
 宮島の紅葉谷公園への上り坂はそれほど急な坂道ではなかったけれど、ハムが転倒しはすまいかと、そのときに備えながら上ったそうです。眺望のきく場所にやり手ババアがひとり。広島弁でやかましく言うのでしかたなく、ハムは生ビールを、伴侶は抹茶セット(もみじ饅頭付き)を注文しました。
帰路、「牡蠣」の看板あり。ハムは立ち食いの生牡蠣を食べた。レモンをしぼってふりかける牡蠣がおいしかったのでしょう、お代わりし、「ここの牡蠣は最高」と叫んでいました。「飲んべえは生牡蠣が好きなのさ」(主人のせりふ)。われわれは生牡蠣が苦手。
 
 坂道を下っていくと別の料理屋発見。伴侶は広島ホットレモン、ハムは生ビールを注文し、カキフライとアスパラのベーコン巻きを別の店でテイクアウトし、ペロリと平らげた。2019年春、手術前の小生は「この世の食べ収め」とまんじゅうをバカ食いしたのですが、ハムの大食いはそれ以上でした。
 
 ベンチに座って宮島の地図を見ているとき、誰かが地図を引っぱり奪い取られたと思ったハムは小さく叫んだ。音もなく忍びよった鹿が地図を口にくわえていたのです。固まったハムに伴侶は「急に動いたら鹿に襲われるかもしれない」と言い、ハムは凍りついた。その模様を通りがかりの旅行者数名がスマホ撮影。
 
 「エサや紙を鹿に与えないでください」と音声放送が流れていたのに与える人がいたという顔をされてはハムもたまらない。「わたしじゃないよ、鹿が勝手に取ったんだよ」とつぶやく。
伴侶がベンチに座ったままの姿勢で少しずつ移動し、ハムも習って移動。鹿は地図を食べていたと思うけれど、目が合ったら何をされるかわからず、振り向かず逃げました。食欲の失せた伴侶は結局、飲みものだけ。
 
 その後、宮島から宮島口へフェリーで渡り(乗船時間10分弱)広島駅で解散。ハムは広島空港でラーメンを食べて羽田へ、伴侶は新幹線で新大阪へ。二人旅は無事に終わりました。

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