2018年12月28日    天皇陛下 皇后陛下
 
 西行や知盛や、と思っているうちに早12月28日。新聞の囲み記事はくだらないので読まないのですが、伴侶が「こんなこと書いてあった。読む?」と言ったので読みました。毎日新聞朝刊です。
 
 記者の多くは学者や教諭に似て蘊蓄、講釈が好きとみえ、「ホワイトハウスの元女性儀典長で来月90歳になるセルワ・ルーズベルトさんは」と紹介し、「レーガン元大統領に1982年から6年9ヶ月、仕えた。この在任期間はまだ破られていない最長記録である」と前置き。さらに前置きが長々続くのですが、省略します。
 
 囲み記事の字数は多すぎても少なすぎてもレイアウトがうまくいかず、蘊蓄をはさんで字数調整するのは、中高等学校の教師が時計を見ながら授業するようなもの。蘊蓄の多い文章は執筆者の手腕にもよりますが、成功しないこともあります。
大学の講義はその点、融通がきいており、時計を見ても、100分を80分で終わらせる教授はステキ。授業料分働けと文句をいう学生はあまりいないのでは。
 
 1987年(昭和62年)10月、皇太子・皇太子妃時代の天皇・皇后両陛下が訪米されたおりに8日間セルワさんはおふたりに付き添い、案内役をしたそうです。囲み記事「金言」(キンゴン)の抜粋。
 
 『お二人はチャーミングな優しい物腰で、楽しそうに、また思慮深く人々と言葉を交わされました。各地で催されるレセプションでは表面的なあいさつではなく、本当の会話をなさっていました。質問をしては、その答えに真剣に聴き入り、人々が周りを囲んでいるのも気づかれないご様子でした』
『ワシントンで終末期患者のホスピスを訪れた時、美智子妃が年老いた一人一人に示された優しさに、私は心を打たれました。儀典長在職中、仕事で涙がこぼれたのはこの1回だけで、涙を抑えるのに苦労しました』。
 
 さらにこう続きます。「皇太子夫妻の帰国後、セルワさんは直筆のお礼状を受け取った。『国王、女王から直筆のお礼状をいただくことはありません。それだけに私のうれしさは余りあるものでした』」。「彼女が君主の中で深く尊敬しているのは現在の天皇と皇后の明仁皇太子と美智子妃ですと語るのも故あることなのだ」。
ここは「です」でやめておくほうがいいように思います。「と語るのも故あることなのだ」は悪文の見本。蛇足。他者のことばと他者の文章の断片をつなぎ合わせて構成するのが記事だとしても、記者の文章力が丸見え、感動の余韻が台無しではありませんか。

前の頁 目次 次の頁